三度目のキスをしたらサヨナラ
……私の名前。

私は自分の名前が『ミナ』であるということを、どうしても彼に言えなかった。

名前も、年齢も。
むしろ自分の素性を隠してしまったほうが《ゲーム》をやりやすい気がした。

「ミナでいいよ」

そうだ。
それは私ではなくて、彼女の名前。

「え?」

「……私は彼女の代わりだから。彼女を思い出しながらそう呼んで」

最後の一口を水で流し込みながらそう言うと、彼は少し驚いた顔で私を見た。

そしてすぐに、その驚きの表情をいたずらっ子のような「ニヤリ」という笑みに変えた。

「そうか。もう《ゲーム》は始まってるんだ?」

「そうだよ」

「だったら俺も。元カレの名前教えて?」

これは予想外だった。

だけど今更引くわけにもいかなくて、私はその名前をゆっくりとかみ締めながら呟いた。

「……蒼太」
< 57 / 226 >

この作品をシェア

pagetop