三度目のキスをしたらサヨナラ
「ソータ……さんのこと、どう呼んでたの？」

「そのまま、ソータ」

「じゃあ、そうだなぁ。えーと。……今から俺は『ソウ』ね」

「うん……」

「これからよろしく、ミナさん！」

──ミナさん。

彼は私のことを、あたりまえのようにそう呼んだ。

昨日知り合ったばかりの女を彼女と同じ名前で呼ぶことに何の抵抗も感じないのか、それとも単純にゲームを楽しもうとしているのか。

いずれにせよ、それはあまりにも自然で。

「こちらこそ、よろしく……」

彼に倣って、その後に『ソウ』と続けようとしたが、戸惑いが邪魔をしてうまく言葉にすることはできなかった。

その名前を呼ぼうとするだけで、私の胸はまだ痛む。

彼が私の前に手を差し伸べて、私たちは軽く握手をした。

「この牛丼に誓って、フェアプレイでいこう」

「なによ、それ……」

思わず私はプッと噴き出してしまった。

牛丼の前で宣誓なんて、なんて馬鹿馬鹿しい。



──こうして。

空っぽになったふたつの丼を立会人にして、私たちの《ゲーム》は始まった。


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