三度目のキスをしたらサヨナラ
60秒間の葛藤
眩しい照明に照らされていた店内から出ると、外の暗さがいっそう際立った。

それでも歩道はネオンや道行く人で彩られ、もの寂しさを感じることはない。

ただ、空気は冷たかった。

私の体はひんやりとした外気に包まれて急激に温もりを奪われていった。

彼──ソウ、も「寒いね」と肩をすぼめ、ジーンズのポケットに手を突っ込んだ。

こんなとき、もし私たちが恋人同士だったら、身を寄せ合ってお互いの体を温め合うことができるのに。

はあっと吐いた息が白くなって広がった。


――結局、食事代はソウが支払った。

レジの前で、私がカバンから財布を取り出そうとするのを片手で拒んで、

「ここで割り勘にするのはかっこ悪いから」

そう言って、ソウは当たり前のように2人分の代金を支払った。


「ごちそうさま」

私はソウに軽く頭を下げた。


「どういたしまして。で、これからどうする?」

……どうする?って。
この受験生は、なんて暢気なことを言ってるんだか。

「当然、ホテルに帰って勉強でしょ?」

「勉強はもちろんするよ。でも俺、夜型だがらなぁ……。もう少しだけ、駄目?」

腕時計を見ながら、ソウは笑った。

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