三度目のキスをしたらサヨナラ
ソウはよく笑う。

だけど、その人懐っこい笑顔から軽薄な印象を受けることはない。
柔和な表情のなかに、時折冷静さや自信をのぞかせることさえあった。

そして、そんな笑顔に添えて発せられる言葉は、不思議なほど説得力を持っていた。

「まだ七時過ぎだよ。今すぐホテルに戻ってもすぐには勉強しないし、ね?」

どうやら私は、この笑顔に弱いみたい。

「……じゃあ、コーヒー1杯だけね」

「ありがとう!」

「でも、今度は私がおごるから」

「はいはい」

嬉しそうに、話半分に、返事を返すソウ。



出会ったときからそうだ。

ソウは、人見知りがちな私の懐に何の抵抗もなく入り込んできた。

私のことを「さん」付けで呼んだり、それなりに年上だということを意識した態度をとっているようでいて、実際リードしているのはいつだってソウの方だった。


──このままではヤバイ。

彼のペースに巻き込まれてしまう前に先手を打たないと。

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