三度目のキスをしたらサヨナラ
それからあまり話が弾むことのないまま時だけが過ぎ、私たちはカフェを出た。

ホテルはすぐ隣だというのに、ソウは「駅まで送らせて」と私の横に並び一緒に歩こうとする。

私たちの歩く先にはネオンが輝く大通りが見えていた。
そこまで出てしまえば駅はすぐ目の前だ。

「だから、そんなに気を使わなくてもいいのに」

「駄目! 女の人が1人で夜歩くことに慣れちゃいけないよ」

大通りまでの短い距離で、私とソウが交わした会話はそれだけだった。


大通りへ出ると、さっきまでの静けさとは打って変わって賑やかな駅前。

道が1本違うだけで、街はこんなにも表情を変えるものなんだ。

酔っ払った学生が千鳥足で車道に飛び出し、タクシーに思い切りクラクションを鳴らされる。

車の音が、人の声が、お店から流れるメロディが、いちいち耳に障った。


駅のロータリーへと続く横断歩道の手前まで来たところで、ちょうど信号が赤に変わって私とソウは足を止めた。

昨日別れた場所とは違うけれど、この横断歩道を渡ればそこはもう駅の構内。
ソウともここでお別れになる。

──≪ゲーム≫の続きはどうするの?

そう聞こうとしたけれどソウはなんだか上の空で、私は仕方なく別れの挨拶をした。

「今日はありがとう、牛丼ごちそうさま」

「……うん」

「受験、頑張ってね」

「うん」

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