三度目のキスをしたらサヨナラ
私たちを乗せた車はゆっくりと滑り出し、駅前のロータリーを抜けて広い車道へと出た。

「ねえ、ソウ。行き先は?」

「ミナさんの一番の想い出の場所だよ。どこでも行くから、教えて?」

チラッと横目で隣を見ると、ソウはシートに深く座り、リラックスしきった姿勢で楽しそうにBGMにあわせて鼻歌を歌っている。

……鼻歌まで歌っちゃって。なんでそんなに楽しそうなのよ。


私は前を向いて、ボソリと呟いた。

「──海、かな」

「海?」

「うん。一昨年の夏に蒼太と海に行ったの。そこで、プロポーズされた」

「へぇ!」

ソウが私の方を向いた。

「ちょっと、運転中! ちゃんと前見て!」

大丈夫だよーと暢気に答えるソウに、こっちのほうがハラハラしてしまう。

「その場所に、連れて行ってくれる?」

「いいね。よしっ、そこに行こう。場所は分かる?」

「うん……でも」

「でも、なに? 問答無用だからね」

「……沖縄なんだけど」

「えーっ!」


賑やかなBGMよりも大きなソウの声が、車内に響いた。

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