三度目のキスをしたらサヨナラ
交差点に差し掛かる手前で信号が赤に変わり、私たちを乗せた車は急ブレーキをかけて止まった。

「はぁーっ」

がっくりと頭をうなだれてハンドルに突っ伏すソウ。

「沖縄って……ミナさん、いくらなんでもそれは無理だよ」

「だよね、残念でした」

ソウのがっかりした様子が面白くて、私はクスクス笑った。

ソウは頭をうなだれたまま、視線を私に向けた。
その黒くて大きな瞳が恨めしそうに私を見つめている。

そんなソウのことを「かわいい」なんて言ったら、怒られるかな……。

「ミナさん、今日は何時まで大丈夫なの?」

「17時からバイトだから、16時すぎにはさっきの駅前に帰りたいけど」

ソウは少し考えた後、姿勢を正してハンドルを握りなおした。

「──いいよ、海だね。沖縄じゃないけど、俺のお薦めの海に連れて行ってあげる」

車は信号の変わった交差点にゆっくりと進入していく。

交差点を過ぎると、ソウはスピードを加速させて左折レーンへと車線を変更した。

頭上には、高速道路入り口を案内する看板。

「あーでも、あそこに行くんならもうちょっと早く出ればよかったなぁ」

「え?」

「あと……長靴も」

長靴?
この寒いのに、潮干狩りでもする気?

私は一抹の不安を覚えた。

「ねえ、私はどこに連れて行かれるの?」


ソウは前を向いたまま、鼻歌まじりに、こう答えた。


「──海と言えば、漁港でしょ?」

< 88 / 226 >

この作品をシェア

pagetop