三度目のキスをしたらサヨナラ

──だけど、現実はそう簡単にはいかなくて。

何度も、厨房の陰で泣きながら煮詰まったおでんを頬張るウーさんを見てきた。

首をかしげながら、まるで隣に奥さんがいるかのように、

「おい、何がおかしいんだ？　火が強すぎるのか？」

って呟くウーさんの姿を、見て見ぬふりをしてラーメンを食べてきた。

ウーさんの作ったおでんを食べるたびに、奥さんのことを思い出して涙が出た。



ウーさんと、その味を笑いながら話せるようになったのは、つい最近のことだ。



ウーさんは今でも、奥さんの月命日には、それがどんなに書き入れ時の週末でもお店を閉めて、事故現場とお墓へお花を供えに行っている。

ウーさんと『ラーメン　うちだ』にとって、そんな奥さんの存在はあまりにも大きすぎて、

「早くいい人見つけて、お店を手伝ってもらったら？」

なんて、冗談でも言えなかった。