三度目のキスをしたらサヨナラ
買い物を済ませた私たちは、再び1車線しかない道幅の狭い道を走り始めた。

私が外の景色を眺めていると、

「なんだか、今日のミナさんはいいね」

ソウはBGMに合わせて指でリズムを取りながら、首を少しだけこちらに傾けて言った。

「すっごーく楽しそう。よく笑うし、初めて会ったときより優しい表情をしてる」

「そうかな?」

「うん。一昨日は近寄りにくい美人だなぁって思ったけど、今はすっかり“かわいい人”って感じ」

「……ありがとう」

照れくさいのに、自然とそんな素直な言葉が口から出た。

「ほらね、そういうところが!」

うん。
そうだね。

だけど、それは誰でもないソウのおかげ。

ソウと出会って、私のガチガチに固まっていた心は少しずつ解け始めていて。

自分でも、そんな自分の変化に驚くほどで……。


「明日のミナさんは、今日よりもっと笑ってるんだろうね。楽しみだなぁ」

“明日”っていう言葉を当たり前のように口に出すソウ。

それがなんだかくすぐったくて、照れくさくて。

「うん……きっとね」

私はわざと外を向いたまま小声で呟いた。



「ねぇ、ミナさん。こんなふうに天気がよくて風が気持ちよく吹いている日に、“海が近い”っていうことを真っ先に知らせてくれるものって、なーんだ?」

ほら、これからまたひとつ、ソウの不思議な話が始まるんだ。

「……波の音?」と聞き返す私に、ソウは「残念!」と答えた。


私はソウの話に相槌を打ちながら、その人懐っこい笑顔を横目で何度も盗み見た。


そして、少しだけ開けた車の窓から、風とともに微かな潮の香りが届いた。

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