三度目のキスをしたらサヨナラ
しばらく黙って海を眺めた後、先に口を開いたのは私だった。

「ねえ、ソウ。昨日は大丈夫だった?」

「ん?」

真横にあるソウの顔がこちらを向く。

昨日よりも、さっき車の中で見ていたよりも、
ずっと近い距離にあるソウの笑顔。

私はその近さにドキッとして、思わず目をそらした。

「ほら、昨日の夜、落ち込んでたから……あの後ちゃんと勉強できたのかなと思って」

「もちろん! 今日のことを考えるとワクワクして、あまり手につかなかったけどね」

「1人で泣いたりしなかった?」

「うん、大丈夫」

それまでの笑顔が、一瞬苦笑いに変わった気がした。

……やっぱり、泣いたのかな。


私は、ソウがここまで想いを寄せる彼女のことが気になって仕方がなかった。

2年の遠距離恋愛の間、浪人中のソウを東京まで通わせておきながら、最後にはそんなソウの気持ちを『重い』と切り捨てた人。

──一体、どんな子なのよ。


そんな考えが思わず口に出た。


「ソウの彼女、見てみたいな」

いきなりの私の言葉に、ソウの表情が硬くなる。

だけど、その後に返ってきた言葉は驚くものだった。

「見たい?」

思いがけず、ソウはズボンのポケットから携帯を取り出すとそのまま私に渡してくれた。

「いいよ、見て」
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