牙龍 私を助けた不良 上
砂浜、夕暮れの
デスマッチと化したビーチバレーやら、水泳競争やらが繰り広げられて数時間後。
木藤達に連れられて海のすぐ近くにある、落ち着いた和風な感じの老舗旅館だった。ホールに行くと、浴衣を着た人達が出迎えてくれた。
「お待ちしておりました」
「言っておいた通りだ」
木藤が女将さんらしき人にそう言うと、彼女はスタッフと荷物を持って大部屋に案内してくれた。
夕方だと言うこともあり、風呂に行けと言われたので着替えを持った。
ここは露天風呂が売りらしく、女将さんがそう教えてくれた。貸し切りだから、ゆっくり出来るようだ。
木藤達はガヤガヤと何かやってた。よく分かんないけど、気にする必要はないだろう。
部屋を出て、廊下を歩いていく。何気無く窓に視線をやる。──夕日に染まったオレンジ色の海が地平線まで広がっている。
賑わっていた昼間とは違って、優しい色なのにどこか心がざわざわする不安な海に見える。
・・・海、久し振り。
そう思いながら無意識に胸元のネックレスに触れた。シャラン、と控えめにおとがする。