牙龍 私を助けた不良 上
何て、言うんだろうか。オレンジの海が、心をざわつかせて来て思わずブラックロザリオを握り締めた。
また、浮かび上がってくる過去。楽しかった頃の、かけがえのない思い出。
私とアイツの、大切な日々。
『何やってんだ〜?』
『何って、泳いでるんだけど』
『泳げてないぞ。ほれ、行くぞ』
『え、に゛ゃっ』
私を抱き上げて、海に入って行く。長身な彼の脇まで入っていて私は足がつかない。
『ほれ、どうよ』
『わっ、離すなっ』
離そうとするアイツの首に腕を回して、ギュッと抱き付く。
海は、苦手だ。