牙龍 私を助けた不良 上
ふと、勇人が歩みを止めて振り返った。何だろうと思いつつ、私も歩みを止めた。
二人の間を、潮風が吹き抜けた。
「・・・あのさ」
「ん?」
「昼間、ありがとな」
照れくさそうに首の後ろに手をやる勇人。突然のことに驚いたが、嫌われてなかったようだと安堵した。
しかし、昼間といえば・・・。あれは、当たり前だと思うけど?
「あれは当たり前だ。礼はいい」
「け、けど・・・俺さ」
「・・・?」
「お前みたいな奴なら、女でも・・・へ、平気だと思う・・・」
「・・・そうなのか?」
「うん。・・・何もしてないのに、睨んだりして悪かった」
勇人はそう言った。ふにゃっと笑う勇人は、おずおずと私の片手と手を繋いで、旅館に戻りだした。