牙龍 私を助けた不良 上
木藤は風呂行ってくるとか言って部屋を出て行った。足音がゆっくりと遠ざかって聞こえなくなる。
広い部屋に一人。
──ドクンッ。
何故か心臓の鼓動が大きく跳ねた。瞬時に眠気が吹っ飛んで、冷や汗がツーッと額を撫でた。
発作的にカバンから、外していたヘッドフォンを取り出して着けると、iPodを弄り曲を流した。
それを聞きながら、深呼吸を繰り返す。落ち着けと念じるように胸元を無意識に掴んだまんま。
暫くして、落ち着いた頃には冷や汗は無くなっていた。鼓動も、正常だった。
・・・嫌になるな。
ちょっとしたことで、取り乱してしまう自分が嫌だ、嫌いだ。耐えなくちゃ、誰かが助けてくれるなんて甘えたらいけないのに。