牙龍 私を助けた不良 上
許せなかった。
桃華は、いつも側にいて怪我をする私を見て泣いていた。戒希の彼女になるまで、嫉妬に狂った女達から守っていた。
大事な双子の妹。桃華の痛みは私の痛み。『お姉ちゃん』は妹を守って当然でしょ。
桃華はそれを分かってたから、私を『お姉ちゃん』って呼ばなくなった。
──もう、守らなくていいよ。
優しい桃華は、私なんかが傷付く度に涙を流して、震えながら強がって笑って、傷の手当てをしてくれてた。
だから。
『桃華に手ぇ出して、無事で居られると思うな下等種が』
私の意識は切り替わり、目の前の暴牙の奴等に狙いを定め、怒りの矛をぶつけた。