牙龍 私を助けた不良 上
ひたすら拳をふるった。
痛みを訴える声、呻(ウメ)き声、怒声、罵声、震えた声を全て。聴覚からシャットダウン。
倒れた奴の足に容赦なく体重をかけて、変な方向に曲げたりもした。
ただ、自分の不甲斐なさと弱さに苛立ちを感じて、それをぶつけてたからかは分からない。
追ってきたアイツらが、加勢してくれてることにすら気が付いてなかった。
──そのせいだった。
『凜華っ──!!!!』
アイツが、暴れていた私を何かから守るように強く抱き締めた。突然のことに、私の動きはピタリと止まった。
──パァ・・ンッッ・・・。
『────っ!!!』
そんな乾いた音と、アイツの声にならない悲鳴を聞き──生暖かい感触を感じながら。