牙龍 私を助けた不良 上
アイツの腕から力が抜けて、ドサッと力なく地面に身体が叩き付けられた。
え・・・?
『ひなた・・・?』
アイツは──ひなたは名前を呼ぶと少し反応してくれて、恐る恐る身体を揺さぶってみた。
────っ!!!
私の手に、赤い雫がついていた。べっとりついたそれは、私の動揺を誘うのには十分だった。
誰かが、銃だとか救急車だとか叫んでる。ああ、銃声だったのかと頭の片隅で感じた。
ひなたの服が胸元から、蝕まれるように赤く染まっていく。
『ひ、ひなたっ!!』
身体を抱き起こして名前を呼ぶと、ゆっくりと目を開けた。頼り気なく瞳が揺れる。
周りなんかに気を回す余裕も無くて、ただ『イヤだ』そんな思いが胸中で渦巻いていた。感じたことのない、恐怖。
『りん、か、無事か・・・?』
『バカひなた!!私の心配なんてしてる場合か!?』
『は、言って・・・カハッ』
血を吐いたひなた。私は服に血が付いたにも関わらず、ひなたをぎゅっと抱き締めた。