牙龍 私を助けた不良 上
室内に重い空気流れる。ただ、テレビが場違いに軽快な音楽を奏でている。
戸惑いは隠せない。だが、どこかあっさり受け入れている自分がいる。
正直言って、凜華が緋龍じゃないか疑ったりしていたからだと思う。
「確信はあるんか?」
「確信、では無いですが。彼女に出会ってすぐに見た光景を覚えてますか?」
「なんの?」
暁が不思議そうに問い掛けると、勇人があ、と声を出した。
「あれか?アイツがやべぇ殺気出した時」
それは出会ってすぐに見た光景だった。
大勢の女に囲まれた凜華が、とてつもない殺気だけでそいつらを倒した。
無意識に『緋龍だ』と呟いたのを、俺は覚えてる。あれだけ強烈な殺気は忘れられない。