牙龍 私を助けた不良 上
何もかもがどうでもよくて荒れていた俺に、『本当の強さ』を教えてくれた緋龍。
・・・──大切な物を見つけて、それを守れる奴になれ。力だけが強さじゃない──・・・
・・・──力が弱くても、大切な物を守ろうとする心を持ってる奴の方が本当に『強い奴だ』──・・・
あの日、あの人はそう言って初めて、俺自身を認めてくれたんだ。
たった一人ですら仲間がいないと言われていたが、それから察するに、緋龍には大切なモノがあった筈。
あくまで推測だが。
ならば、
「二人が同一人物なら、全ての辻褄(ツジツマ)が合う」
「何の辻褄が合うの?」
「あの殺気のとか?」
黙っていた陸斗と海斗がそう聞き返してきた。
あぁ、と短く返して全員の顔を見回す。困惑と、何処か納得したような顔をしていた。