牙龍 私を助けた不良 上
side:凜華
誰かに名前を呼ばれた気がして目を覚ました。それは、心地よく響くあの人の声──・・・。
ぼやける視界に写ったのは、銀と青の光。木藤龍騎の姿だった。
ボーッとその姿を見つめてから身体を起こし──ポタリときらきら光る雫が、布団に落ちるのを見た。
それは、私の瞳から溢れ出して頬を伝っている涙だった。
・・・この私が泣いて、いる?
驚きの状況に驚いていると、木藤の顔が近付いて来てちゅ・・・と涙に口付ける。
カチンと身体が固まる。
その行為は繰り返しされて行き、思わず閉じて閉まった瞼にも口付けられる。
頬が赤くなっていくのを感じながら、木藤にされるがままじっとしていると、いつの間にか涙が止まっていた。
そして、木藤はゆっくりと顔を離していき、今度は大きな手でそっと頬を撫でて来た。