牙龍 私を助けた不良 上
そして、まるで宝物を守るかのように深く抱き締められる。大きくて力強い腕で。
布越しに感じる温かい体温と、規則正しい鼓動。
──どうして、だろう。
木藤と一緒にいると、安心する。いつも心強い何かに、守られているような気がする
アイツとは、少し違ったその感情が何なのかは分からない。
「凜華、お前は一人じゃない」
この声を、この瞳を、この温もりを──信じてもいいかもしれない。頼ってもいいかもしれない。
私を犯した大罪から、抱える大きな過去(ヤミ)から、助けてくれるかもしれない。彼──木藤龍騎なら。
私はそう思いながら、ゆっくりと口を開く。
「いつか、決心できたら」
「・・・・・」
「ちゃんと話す、よ」
木藤は、返事をしなかった。その変わりに、抱き締める力がぎゅっと強くなった。
「ありがとう・・・」
木藤に聞こえたかは分からない。優しい瞳に見つめられながら、強く抱き締める腕にゆっくりと身を委ねた。