牙龍 私を助けた不良 上




可愛くされるのは、別に嫌いな訳じゃない。一応、女の子だし。


見た目のせいからか、皆に『カッコいい』とか『クール』とか、そう言われ続けてきた。別に、嫌とは思わなかった。


それに、双子の妹の桃華がふわふわした可愛らしい子だから、尚更そう言われていた。


可愛いなんてお世辞でも・・・いや、言われたことがあるか、最初で最後にたった一度だけ。




『可愛いのな、凜華』




あいつと、初めて海に行ったときに言われた。生まれて初めて、家族以外の男の人に言われた。


・・・小さな、願いだったな。


普通に生活して、普通に生きて、何がダメだったんだろう。何処で、踏み間違えたんだろう。


・・・それにしても変わったな。メイクを施された顔を見ながら思う。


今の私をアイツが見たら、何て顔をする?バカみたいだって、いつものように笑って言うのか?


また、褒めてくれるのかな?また可愛いって、言ってくれるのかな・・・?




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