牙龍 私を助けた不良 上
気分の向かなくて憂鬱なのとは裏腹に、準備が終わったのでふるふると頭を振った。
・・・私が幸せを求めたら、ダメ。
「凜華、すっごく綺麗」
朱里に言われて鏡に写る自分を見た。着飾れたそれは、まるで何かを誤魔化そうとするために施された飾りみたいだった。
「・・・ありがと」
「うん。・・・行こ?」
私の雰囲気が変わったことに気が付いたのか、朱里はぽんっと頭を撫でながらそう言った。
小さく頷いて、促されるように更衣室を出た。
・・・切り替えるんだ、凜華。
感情に流されたら、私はまた罪を重ねてしまうから。針を刺したような胸の痛みを、押し殺した。