牙龍 私を助けた不良 上
そんなホストクラブの中に、不機嫌な顔をした男が女に囲まれてソファーに座っていた。
銀髪がいつもと違った髪色でセットされていて、目も色が違って。
一瞬、誰だか分からなくなって、私は動きを止めた。それになにより──・・・。
『ほら、早く来いよ。凜華』
いつも明るい笑顔で、私を笑わせてくれていたアイツに、背丈は違うけど、あまりに似ていて。
「───・・・」
誰にも聞こえないくらい、小さい声で、懐かしい人を、大切な人の名前を、呟いていた。
──途端に、『何か』が胸から混み上げてきた。溢してはならないモノが。
私は胸元で揺れるネックレスのロザリオを、戒めるように、ゆっくりと確かに、手で包み込んだ。