牙龍 私を助けた不良 上
くだらない会話を続けながら、木藤と勇人と一緒に廊下を歩く。
制服に着替えた木藤は、とてつもなく面倒臭いといいたげに、返事を返してくる。勇人は、キラキラした目で木藤を見ている。
まるで兄弟みたいだ、と思っていると。
「龍騎、どこ行くんだ?」
「屋上に」
「・・・何かあるのか?」
「暁が麻美さんと一緒にいる」
・・・麻美さん?
麻美さんって誰だ?木藤が女の人の名前を言うところ初めて、見た。親しそうな、雰囲気。
ズキッ・・・────
刹那、胸が酷く疼いた。あの時感じた痛みによく、似ている。咄嗟に、胸元を抑えた。
ネックレスが、ゆらりと、揺れた。