牙龍 私を助けた不良 上
「・・・か、凜華」
胸元を抑えているのを見て、勇人が私にそう言った。騒がしい廊下の中、その声はやけに鮮明に聞こえてきた。
そのことに驚いたけど、何でもない、と言って胸元から手を離した。
木藤まで、不審そうに見てくるから焦ったけど、何でもないという顔をして、取り繕った。
何だったんだ。
自分でも分からない感情に、ただただ戸惑いながら屋上に向かう。
・・・それにしても、
「すごい人だな」
「何が」
「ケータイ構えて付いて来てるぞ。お前達、人気だな」
そう言って後ろを振り向けば、大勢の女が、ケータイを向けて、シャッターチャンスを待っている。
しかも、男も混じっているし、パシャパシャと、木藤と勇人の後ろ姿を写している。