牙龍 私を助けた不良 上



・・・俺を呼べ。


たった一言なのに、やけに胸に響いた。もう、何回目になるのか──。木頭は、私の芯をぐらつかせる。


まるで、角砂糖を温かいコーヒーで溶かすように。甘く、甘く、確実に。


・・・いつか、言えるだろうか。


木頭は、私を助けてくれた。温かい笑顔と、温かいその声で。


同情なんかじゃない。面白半分でも、好奇心からでも、哀れみからじゃない。私が欲した、温かさ。




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