牙龍 私を助けた不良 上
「ホラー映画」
「ゾンビの映画」
「怖がらんと思うで?」
「「何でーー!?」」
「女の子怖がらせるなんて、悪趣味よ」
「「別に趣味じゃないもん」」
どうでもいい会話が繰り広げられるのを聞きながら、お化け屋敷の出口を見つめる。
一方道だから迷うことはないだろうし、そんなに長い距離でもない。
それなのに。
凜華は暗闇から出てこない。そのうえ、俺達の後ろにいた人達が出てくる。
「ちょっと、遅すぎじゃない?」
「・・・確かにせやな」
「探しに──「総長ー!!!」
勇人の言葉を遮ったのは、聞き覚えのある仲間の声だった。
焦ったように、走り寄って来た。かなり急いでいるのか、額に少しだけ汗が滲んでいる。
黒髪黒目で、どう見ても不良に見えない仲間の大雅が、息を吐き出して、俺に言った。