牙龍 私を助けた不良 上
「いい目だ。嫌いじゃねぇな」
睨み付ける私を、まるで小さな子供のようにヘラヘラ見る。
そして、たったままの私の首から下がるネックレスを、指で指しながら言う。
「それ、アイツのだろ?何だ、自己満足の償いのためか?」
「それはっ・・・」
「可哀想だな〜、アイツ。桜井・・・ひなた、だっけか?」
私の、パンドラの箱。
誰にも言ったことのない、見られたことのない『過去』という名の悪魔達が、溢れそうになる。
ピシリッ──・・・。
何かが軋む。音が遠退く。声が聞こえてくる。
「お前のせいでな、」
『あんたのせいだ!!』
ピシッ、ピシリッ──・・・
「アイツが死んだ」
『あんたが死ねば良かったんだ!!!!』
ピシピシッ──・・・
「人殺しだな、緋龍?」
『人殺しなんて死んじまえ!!!!』