牙龍 私を助けた不良 上
* * * * *
「・・・緋龍?」
急に俯いてしまった少女を前に、男───及川は訝しげに名を呼ぶ。
ピクリともしない彼女は、まるで立ったまま意識を失っているようだ。しかし、そんな訳がない。
・・・コイツは、あの緋龍だぞ?
そう思って、及川はハッとした。あの時、彼女は同じように動かなくなっているではないか。
その瞬間、背筋にゾクリと寒気を感じた。ヤバいと思い、及川は即座に距離を取った。
しかし。
「───殺す」
少女がふらりと、一歩踏み出しながらそう言った。
すぐに、及川の叫び声がその倉庫に響き渡った。