牙龍 私を助けた不良 上
side:**
・・・緋色の龍。
倉庫の二階、誰にも見られることのない死角から、下の様子を見る。
夥(オビタダ)しい数の人間が、血やら傷やらを付けられて倒れている姿は、下手をすれば地獄絵図だ。
少女は、力なく地面に座っている。
先程までの荒々しい──正に、阿修羅と言えるような姿も雰囲気も、残っていない。
信じられない。
「・・・・・」
「狼姫、どうした?」
「・・・姫蝶」
積まれた鉄骨に座って壁に凭れたまま、姫蝶は漆黒の瞳を私に向けた。
どす黒い闇がちらつく瞳に、黙って視線を送る。綺麗な闇は、魅惑的な光を宿している。
「・・・帰る?」
「いや、もう少し」
姫蝶は、普段と今じゃ性格が違う。二重人格じゃないけど、そこが私とは違うところ。
少女と銀髪に目を戻す。