牙龍 私を助けた不良 上
side:龍騎
「ハッ、成り下がったな、緋龍」
突然掛けられた声に、凜華がビクリと肩を揺らした。落ち着かせるように抱き寄せて、声の主を見る。
ボロボロな男は、おそらくは暴牙の総長だろう。凜華は、静かに男を見た。
「お前も、見ただろ?」
「・・・・・」
「コイツは緋龍で、化け物だ」
その嘲るような言葉に、凜華が怯えるように俺の服を掴む。その手は、震えている。
・・・知ってるよ。
まるで、弱った小動物のようだ。腕に力を加えて、俺は男に言った。
「化け物じゃねぇ」
「見た目はな」
「こいつは凜華だ。緋龍でも、化け物でもねぇ」
男が仰向けに倒れたまま、驚いたように俺達を見つめた。