牙龍 私を助けた不良 上
すると、バタバタと走り寄ってくる聞き慣れた足音が複数聞こえてきた。
遠くからしていた乱闘の音は、聞こえなくなっていた。終わったのだと、肩の力が抜ける。
立ち上がりながら、気を失った凜華を抱き上げる。いつもつけているネックレスが、チャラッと音を立てた。
「身体に力が入んねぇ」
「・・・は?」
唐突に倒れていた男が、自嘲気味に言った。倒れたまま、諦めに似た表情をしていた。
視線は、倉庫の天井をただただ見上げているだけ。
「緋龍の大事なもんがあんのに、かすり傷もつけらんねぇ」
「・・・どうして、緋龍に執着する」
「さぁな、ソイツに聞け」
疲れたとでも言いたいのか、そいつは倒れたまま目を閉じた。
・・・何があったんだ。
問い掛けても、答えは帰ってこない。一緒、倒れている男を見てから、走り寄ってくる仲間に近付いた。