牙龍 私を助けた不良 上
「・・・姫蝶、迎え」
「あぁ、ありがとう。ネル、朱里」
佇んでいた姫蝶と狼姫が、二人に気付いた。
すると、ネルの頭に乗っていた小さな白い猫が、姫蝶に飛び付いた。
踏み台にされたネルが、少し前のめりになったものの何とか保ち、うらめしそうに猫を見た。
『にゃ、にゃ』
「ルナ、着いてきたのか」
『にゃぁ〜ん』
姫蝶は、飛び付いて来た猫──ルナを撫でた。ルナは嬉しそうに鳴いて、姫蝶に頬擦りした。
仲のよい様子に、ネルと朱里も左右から抱き付いた。何とも微笑ましいが、薄暗い倉庫には似合わない。
「・・・・あほらし」
狼姫が、なんとも冷めた目で見ているのは気のせいではないだろう。
ふぅ、と溜め息を吐きながら黒銀の長い髪を、くるくるとほっそりした指に巻き付けた。