牙龍 私を助けた不良 上
姫蝶はそんな狼姫を見ると小さく苦笑して、ネルと朱里を引き離した。
そして、足元にいる男に目をやった。先程まで、緋色の長髪の少女が蹴り飛ばしたりしていた男だった。
今は脅えるように、姫蝶を見ていた。
「なっ、何でアンタが!?」
「久し振りだな、及川」
「ひぃっ!!」
男──及川は、不適に微笑んだ姫蝶を見て、ガタガタと自由に動かない体を震わせた。
姫蝶は滑稽だと言わんばかりに、及川を見下した。ネルが、ん?と言いながら、しゃがんで及川をじいっと見た。
金色の猫目が、獲物を見つけた肉食獣のように、らんらんと光っている。