牙龍 私を助けた不良 上
そんな彼女に続いて、狼姫、朱里、ネルも踵を返して、倉庫の入り口に向かって行く。
暗い倉庫には、厚底ブーツの足音と微かな衣擦れしか、音は響かない。ゆっくりと、倉庫から出た。
倉庫前には一台の黒塗りの高級車が止まっていた。明らかに法律違反並の濃いスモークが施され、中は一切見えない。
近くには、桜色のバイクが止まっていた。朱里はルナを姫蝶に返して、ネルと共にバイクへ近付いた。
すると高級車の運転席が開いて、おしゃれな服を着た男が出てきた。銀のウルフヘアで、気だるそうな雰囲気だ。
次に助手席が開いて、赤茶色の無造作ヘアーの少年が出て来た。
「迎えに来ましたよ。姫蝶、狼姫」
「ありがとう」
姫蝶が嬉しそうにふわりと笑うと、少年は彼女をその腕(カイナ)で包み込んだ。
姫蝶はまるで、幼子のように少年をぎゅっと抱き締め返した。普通の女の子と変わらない。