牙龍 私を助けた不良 上




「怪我してないか?」


「うん、平気」



姫蝶と少年は、顔を見合せて笑うと車の後部座席に座る。


狼姫が微笑ましそうに笑い助手席に座ると、ウルフヘアの男が呆れたように溜め息を吐いて、運転席に乗った。


車が緩やかに走り出すと、その隣を朱里とネルが乗ったバイクが走り出す。


丁度大通りに出た所で、数台のパトカーと救急車が入れ違いに、倉庫に向かって行った。



「呼んでたんだ?」


「違うよ。呼んだのはあいつらだよ、瑠矢」


「そっか・・・。お疲れさま」



姫蝶は少年──瑠矢の肩に凭れながら、静かに月を見上げて笑った。


夜空に浮かんだ満月が、恍惚と蒼白い光を放っていた。




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