牙龍 私を助けた不良 上
崩壊、緋色の涙
side:陸斗
緊張が消えない。規則正しい音が耳に焼き付く。木霊している。
隣にいる海斗が、ずっと俯いたまま顔を上げない。両手は、硬く組まれて握られてる。
悔しいんだって、すぐに分かった。だって、僕らは双子なんだ。
いつも笑ってる暁も真剣な顔をしているし、ついさっき来たばかりの志貴や麻美さん、勇人は立ったまま扉を見ている。
『緋姫凜華』
そう書かれた病院の個室に、龍騎と医者と看護師が入ったまま出て来ない。
どうなったのか、何一つ分からない。僕が陸斗に視線をやった時、医者と看護師が病室から出て行った。