牙龍 私を助けた不良 上
二度と、こんな世界を生きたくないと──目を開けたくないとまで思ったりもした。
私はそれだけ、彼が大切だった。
無くなってから、初めて気付いたことだった。遅いって、分かってた。
だから、怖いんだ。
『彼』がいた『現在』が、『過去』になっていくのが怖い。
大切なモノが出来て、自分という人物が変わってしまうのが怖い。
『凜華、お前は一人じゃない』
ねぇ、だから。
そんなことを、言ったりしないで。私は、彼を『忘れられていく過去』になんかしたくないだけなの。
だから、『未来』には進みたくないの。『未来』には進めないのよ。
だから、何もかも要らないの──。だから、何もかも──。