牙龍 私を助けた不良 上
side:凜華
漸く、目を覚ました。
どうやら私は、1ヶ月近く眠ったままだったらしい。先生──医者が、そう言っていた。
だけど、後遺症とかが無いか検査された。何だか、皆眉間に皺が寄っていた。
難しい問題を目の前にした時のような、難しい顔で何だか分からないが、変な感じがした。
私は、
「──記憶喪失のようです」
記憶喪失らしい。
目の前にいる銀髪の男が、悲しそうな表情をしたまま、私を見ていた。
だけど、私は彼のことを何も知らない。分からない。