牙龍 私を助けた不良 上
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いつものように、病室にいた時だった。握っていた手が、ピクリと動いた。
・・・もしかして。
僅かな希望を胸にそっと握り返すと、その手がまた、弱々しい力で握り返してきた。
「──・・・?」
声にならない声が零れ、白いベッドに横たわっている少女の瞼が、震えながらゆっくりと開かれた。そのまま、私を捉える。
「桃華っ?私、華よ、分かるっ?」
「・・華、さん・・・?」
私は目が熱くなるのを感じながら、ナースコールを押そうとして。
「・・──は・・・?」
「え?」
「凜華、ちゃんは・・・?」
目覚めた彼女が呼んだのは、たった一人の双子の姉である少女の名前だった。