牙龍 私を助けた不良 上
俺が緋龍──凜華に出会ったのは、その抗争が起きた日の前日。
その時俺は、まだ牙龍の幹部候補でしかなく、下のメンバーの大勢の中の一人だった。
そんな俺が、探しても見つからない緋龍に出会ったのは奇跡だったんだと、今更ながらに思わされた。
そんな凜華が、どうしてこの町に戻ってきたのかは分からない。
「俺は、・・・・・」
何やってんだろう。
助けてもらったのに、強くなるきっかけをくれたのに、何もしてあげられていない。
澄みきった青空を見上げると、フェンスから背中を離して立ち上がった。