牙龍 私を助けた不良 上



目が覚めたにも関わらず、私は病院に入院したままだった。どうやら、約1ヶ月だったとはいえ、体力とかが落ちているだろうと言われた。


要するに、だ。精密検査やリハビリもしないといけないし、記憶喪失なので医者から大丈夫だと言われるまでは退院できないというわけだ。


非常に、面倒臭いことこの上ない。


・・・本人は、大丈夫なのに。


そう思ったが、退院して学校に言っても暇だろうから特に反対する要素がないので、あえて言わなかった。


多く見積もっても、たぶん2週間くらい経たないと退院出来そうにない
。まぁ、別にそれはいいんだけど。



「・・・勇人」


「ん?」


「この前ここに来たあの人は?」


「・・・・・」



私が目を覚ました4日前のあの日、安心したような顔をして私を見ていて――誰なのかと聞いたときに、驚いた顔をして・・・あれから一度も、あの人はここに来ていない。


・・・銀髪の、綺麗な人だったな。


そう思っている私をよそに、いつの間にか勇人は眉間にしわを寄せて難しいというか、どこか言いずらそうな顔をしていた。口を開いてもすぐに閉じて、言いよどんでいる。


聞いたらまずかったのかと思い、やっぱりいいと言い掛けた時、勇人が思い切ったように口を開いた。



「凛華、本当に分かんない?」


「あの人のこと?」


「うん。・・・龍騎って言うんだよ」



何処か、誇らしげに勇人は言う。



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