牙龍 私を助けた不良 上



再び沈黙が部屋を包む中、俺は聞こうと思っていたことを、聞こうと口を開いた。



「凜華、」


「ん?」



・・・聞いても言いか、正直言うと迷ってる。


また、あの時みたいに凜華が混乱して倒れたりしたら──そう考えると怖い。


だが、聞かなければ、凜華が抱えてるモノを無くしてやれない。


例え、凜華が苦しい思いをするとしても。



「及川って、知ってるよな?」


「・・・っ」



疑問でなく、確かめるように聞くと、凜華は、苦しいのか眉を潜めて、俺を見た。



「正直に、答えてほしい」


「・・・どうして」



言いたくないと、表情で、言葉で伝えてくる凜華に、迷いそうになるが、一度深呼吸をして、



「・・・俺は──」



言えなかったことを、凜華に伝えようと口を開いた。覚えていなくても構わない。


だけど、覚えていてくれたら──。



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