牙龍 私を助けた不良 上
side:凜華
それを聞いただけで、苦しくて、悲しくて、悔しくて、やるせなくなる。それなのに。
──及川って、知ってるよな?
あぁ、知ってる。忘れたりなんか、出来るわけない男の名前だ。許せないやつだ。
「・・・どうして?」
・・・どうして、言わなければならないんだ。
手をギュッと握り締めて、混み上がってくる感情に耐える。
そんな中、彼──木藤龍騎は、決心したように深呼吸して言った。