牙龍 私を助けた不良 上
緩和、華の休息
* * * * *
あの日、私が彼女と初めて出会った日のこと、一度も忘れたことはなかった。
綺麗すぎて──そう、瞳を支配する闇が綺麗すぎて惹かれていった。
『優しい母親の愛情は、緋色だ』
難しいというか、今思えばあの人らしい誉め言葉だったそれは、私にとって大切な言葉。
彼女は闇にあって、闇に染まらない人だった。私に、何も聞かなかった。
そんな彼女は、気が付いたら回りに人が集まっているような、素敵な人。