牙龍 私を助けた不良 上
「兄さん?」
「あぁ、言ってなかったっけ。この人は、私の兄で咲哉(サクヤ)という」
「・・・そうか」
なるほど、といった感じで兄さんを見る木藤。物珍しげな表情に、またしても兄さんはたじろぐ。
ブランドもののスーツを着ていることから察するに、仕事は真面目にしていたらしい。
「それで、理由は?」
「・・・玲矢から聞いたんだよ」
──凜華が入院してるって。兄さんはそう言いながら、側にあった無人の椅子に座り込んだ。
だが、私はそれを気にしている余裕は無かった。だって、おかしいから。
・・・何故、知っている。
私が学校を休んでいたとしても、あの帝牙高校だぞ?いちいちその理由を、調べる必要はないはずだ。