牙龍 私を助けた不良 上
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「遅かったな」
病院の駐輪場には、大きめなバイクに寄り掛かった少女がいた。
起伏な身体はライダースジャケットに包まれて、黒銀色の長髪が艶めいている。
ブランドスーツを着た男は、すみませんと言いながら、彼女に近付いた。
「息抜きは出来たか」
「ははっ、お陰様で。重々、本当にすみません」
「いや、こちらとしても助かった。・・・私が接触すると、事態を悪化しかねないからな」
彼女は少し寂しそうに言った。