牙龍 私を助けた不良 上



「本当は、分かってる」


「・・・・・」


「貴方が、一番苦しかったって」



思い出は、温かいから優しくて、悲しいから苦しくて、振り替えると、留まりたくなる。


だけど、それは大きな力になる。


あの子だって、もう過去(ゲンソウ)を見ても一人で泣くことは無いだろう。



「凜華は、もう独りではない」


「・・・・・」


「人間が一人に独りになるのは、自分から逃げてしまった時だ」



自分を否定して逃げてしまえば、それこそ他人からの愛を拒み、自分の存在を拒むことと同じ──独りになるということ。


けれど、彼女はもう、独り─自分を否定すること─を止めたのだ。



「見つけたんだ、きっと」



自分を信じて、愛してくれるモノを。大切な、愛する人を。




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