牙龍 私を助けた不良 上
人に頼ることが、誰より苦手なのにいつも無茶ばかり。心配にならない日は無い。
どうしたらいいんだ、と何度も悩んだけれども望夢は、そんな人の気も知らずに。
「姫ちゃんは、とーっても優しい人にゃー。だから、自分の価値を分かってないにゃ」
「うん」
人に手を差し伸べて、小さな背中に沢山のモノを背負っていく姿は、他人から見れば自虐的だ。
だから俺達は、こうして傍に寄り添うことしか出来ない──いや、これだけは出来る。
「姫ちゃんをちゃんと守ってね。それが出来るのは、瑠矢だけにゃー」
「ははっ、頑張るよ」
「期待しないでおくにゃ。──さて、うちも準備するかにゃー」
「なら、俺も」
我らが敬愛する姫君のために。
悪戯っ子い笑みを浮かべたネルが、愛らしい望夢の寝顔を見つめていた。